ハワース・嵐が丘

日本から英国に訪れる人のほとんどが、薔薇の咲く季節に憧れる。

でも私はここハワースで、一面のヒースの丘をみた。紫色に染まる、果てしなく続く荒野に咲く花。

ハワース・嵐が丘リントン・ヒースクリフが愛したムーアの夏。肌寒く、『嵐が丘』の名のとおり、風が強く吹きすさむ。

雨も時折降るけれど、雲の切れ間から太陽が覗いてヒースの花々が照らされた瞬間、この夏の荒野が天国に思えた。

しかし2月、花が咲いていない時に訪れたときには、より一層『嵐が丘』の世界を感じた。

なにより一歩でもムーアに出てみると、荒野にさ迷うジェイン・エアさながらの気分になってくる。

そしてキャシーとヒースクリフの姿が、すぐそこに浮かぶかのような。

キャシーは天国にいるより荒野に突き落とされたほうが幸せだと言った‥シャーロット、エミリ、アンやブランウェルのブロンテ家もここでよく遊び、空想をしていたのだろう。

そう、ハワースは19世紀英国文学の名作シャーロット・ブロンテ作『ジェイン・エア』、エミリ・ブロンテ作『嵐が丘』、アン・ブロンテ作『アグネス・グレイ』で有名なブロンテ姉妹が生涯のほとんどを過ごした村。

彼女たちが住んだ牧師館が現在博物館になっている。

父パトリックはアイルランド出身の牧師で、ハワースの教区教会に遣わされていた。

村の中心にあるインフォメーションセンターにいると、ポストカードをみている英国人女性たちが「これは何語かしら?」と訝し気にしていた。

私が「日本語でハワースって書いてあるんです」と言うと、横から係員が「日本人は夏になるとほぼ毎日のように来るんだよ、学校でブロンテ文学を学ぶのかい?」と訪ねてきた。

「少なくとも若い世代は習うわけではないんですが‥でもとても幅広い年代から愛されています。私もとっても大好きです、彼女たちも、その作品も。」

ムーアを歩き、一人佇む。

どこか、おどろおどろしくも切ないあの物語が私の目の前に広がる。

時代を、時空を超えて。

特派添乗員:宝生美歌 (2011年8月)

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